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CDの中身についてお話しします。

今年の3月にリリースしたCDの中身についてインタビューして頂いた記事を抜粋して私のブログにも記載したいと思います。
デビューアルバム「ウィーンの光と影」
クライスラー/美しきロスマリン
愛の悲しみ
愛の喜び
サラサーテ/ツィゴイネルワイゼン
エルガー/愛の挨拶
ラヴェル/ツィガーヌ
ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調Op24「春」
・特に思い入れのある曲は?
どの曲も思い入れはありますが強いて言えばクライスラーの古典演舞曲集より「美しきロスマリン」「愛の喜び」「愛の悲しみ」でしょうか。
この3曲はウィーン留学中に沢山弾きました。コンサートでも沢山弾いたので思い出深いです。
ウィーンに生まれた人なら小さい頃からこの曲をラジオやテレビやコンサートで日常的に耳にしてきた心の深くに染み込んでいる
曲です。当時はウィーンフィルの先生が弾かれるウィンナ・ワルツを真似する事に必死になっていました。その後ヨーロッパで
生活して数年経った頃このような曲はレッスンで学んでどうのこうのなる曲ではないと気付きました。
勿論ウィンナ・ワルツの型はありますが、それは勉強した上でウィーンの人々の気質を理解したり、食であったり
季節の移り変わりを通して日本人の私との対比で本質が浮かび上がってくる感じがしました。 何より大事なのはごく自然に表現するという事と、文化の理解ですから一朝一夕では難しいところが悩みであり興味深いです。
ロストイントランスレーションという言葉がありますが翻訳しきれない文化もあって。
完璧に理解するのは難しいかもしれませんが私もできる限りウィーンの文化を本場の雰囲気を思い出しながらこれからも
表現していく感じです。
そういった意味でもこの3曲は今のベストかなと思っています。
 
・苦戦したところ(曲)
良い録音にしたいと思えば思うほど力んでしまいます。
演奏はその場の空気感、自分や共演者の心の様子が振動となって音に表れてしまいます。
曲が体に入ったら意識しすぎないで自然に演奏した方が雰囲気は良く出るような気がします。
・どこが1番気に入ってる?
どの曲もお気に入りですが、全曲を通して自然体に表現出来たかなと思います。
・レコード時間はどれくらい?
とにかく時間がかかりました。記憶が飛ぶくらい笑
本当にピアニストとエンジニアに感謝しています。
 
・最後にここに注目して聴いてほしいなど
2020年コロナで社会活動が止まってしまった時、今まで前だけ向いて走って来たのを一度ストップしゆっくりウィーン時代を思い返したり、若い頃の自分の演奏を振り返ってみたりしました。当時は学校の課題で日々のタスクを消化する事で時間が過ぎていきました。帰国後は音楽を表現だけでなく仕事としても意識して生活してきました。
そんな帰国後3年目にコロナが出現して空白の時間が沢山出来ました。
その時間を使って総括することでようやくウィーンで作った体に血が巡り魂が入った気がして...
そしてこのタイミングで演奏を適切な録音で記録したいと思いました。
私の亡き恩師に、帰国してもう○年経ってしまいウィーンの事を忘れてしまいそうで不安ですと話した際、

“不思議と思うかもしれないけれど、時間が経てば経つほどウィーンの時間が体に流れるから心配いらないよ。”
と仰って下さったのを今になって実感しています。
聴いて下さる皆様へ少しでもウィーンの空気が伝わります様に。


※こちらの記事は「音楽のへやmuoom」のホームページよりブログに記載されています。ピアニスト米根弥恵さんのインタビューも合わせてお楽しみ下さい。